【気になる勝手口】

そのお宅は、木々が鬱蒼と生い茂る森の入り口のようだった。

ご相談の内容は
「家の勝手口が”気になる”」というもの。

私は、ご依頼内容は一旦置いておいてあれこれ脱線した質問をする。
ご趣味はありますか?家族構成は?
好みの色や生まれ育った町、好きな本、興味のあることは何でしょう?…。
玄関に飾られている絵や器のことなど。

そうやって質問を重ねて、お客様の人となりを想像し
お客様自身になりきってみると
お客様がいまの庭について具体的になにを不満に思っているのか、その改善のイメージがしやすい。

 

玄関と横並びで「落ち着かない」

お話を聞いて分かったのは、
玄関から2~3mしか離れていない位置に勝手口があり
外からの視線や人の気配が”気になる”ということだった。
勝手口は本来、客人を迎える玄関とは反対のパーソナルな場所。
それが玄関と横並びになっていては、確かに落ち着かないだろう。

視線や気配をさえぎるには、物理的なワンクッションを入れればいい。
元々木々は植わっていたが、その場の雰囲気やお客様の好みに合わせて
より〝控えめな境界〟にした方がよさそうだ――。
そこで、お客様が好きな材質だという鉄と木を使って
小さな扉とフェンスをつくるプランを提案した。

扉は、私が数案ほどデザイン画を描いた。
その中からお客様が選んだのは、静かな月夜を連想させるシンプルなデザイン。
これを、鉄材を専門とする群馬の鉄作家、鈴木浩さんに製作してもらった。

こうして出来上がったオーダーメードの扉と、フェンス。
今では辺りにしっとりと馴染んでいる。
「この家に移り住んでからずっと気になっていた嫌な感じが、すっかりなくなりました」。
お客様にそう言っていただけた。

 

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